「生きる力」の育成を掲げ、コミュニケーション力を高める教育が求められて早や10年。美術教育の現場や美術館でも、コミュニケーションを軸にした鑑賞の重要性が高まっています。しかし、「具体的な指導方法やノウハウがない」「作家や作品に関する情報を説明するのと、どう違うのか分からない」「自由に意見を言って、最後にどうまとめればいいのか」「授業評価はどうするのか」といった声は今なお多く聞かれます。こうした疑問を解消するには、方法論を習得するだけではなく、対話=コミュニケーションそのものについてひとり一人が深く考え、スキルアップを計る必要があります。
世界に先駆け、アートを通じて鑑賞者・学習者の「観察力」「批判的思考力」「コミュニケーション力」を育成する教育カリキュラムを開発したニューヨーク近代美術館(MoMA)。そのMoMAの教育部長として同カリキュラムを開発し、その後ヴィジュアル・シンキング・ストラテジー(VTS) として発展・確立させ、全世界に普及させたのがフィリップ・ヤノウィン氏です。日本における対話型鑑賞のけん引役として知られるアメリア・アレナスもその開発メンバーの一人でした。
本連続セミナーは、ヤノウィン氏本人の指導のもと、3期1年にわたるセミナーを通じて、対話型鑑賞の草分けであるVTSを体系的かつ本格的に学ぶ、日本では初めての機会です。第1回では、コミュニケーションを介した鑑賞の本質と基本理論を学び、第2回では、実践を通して参加者ひとり一人がナビゲイター(※)としてのスキルアップをはかります。第3回では、講師陣と参加者全員で対話型観賞を日本の現場で実践していくために必要な、具体的提案と解決方法を見出し、プロフェッショナルなナビゲイター/エデュケーターとしての見識を深めます。なお、全Step修了者には、試験の上、認定資格の発行を検討中です。
※ ナビゲイター:作品と鑑賞者、および鑑賞者同士の間に立ち上がるコミュニケーションをより深く、楽しく、意味あるものにしていく役割を担う人。ファシリテイターとも呼ばれる。
対象は、学校教員、美術・博物館教育普及担当および学芸員、学校のカリキュラム作成に関わる職員、行政の教育担当者をはじめとする、VTSや対話型鑑賞、コミュケーションを通した学習に興味のある全ての方です。
本連続セミナーは、ヤノウィン氏のもとMoMAでVTSを学び、90年代初頭、日本にコミュニケーションを介した鑑賞教育を紹介した福のり子が総合監修を務めます。
アートを通じて鑑賞者・学習者の「観察力」「批判的思考力」「コミュニケーション力」を育成する教育カリキュラム。VTSでは、美術史の知識だけに偏らず、鑑賞者同士のコミュニケーションを通して、美術作品を読み解いていきます。その結果、
この様に、VTSは教育の現場にたずさわる人たちに、今日の学習要領に見合った指導法を提供し、同時に美術・博物館シーンにおける主体的鑑賞者を育成します。VTSは誰にでも習得可能であり、その実績は、欧米はもちろん、東欧各国、中東、および南米を含む世界各国の教育現場で採用され、特に、アメリカでは約300の学校および約100の美術・博物館で導入されています。さらには、医学生の臨床力向上を目的としたハーバード大学医学部との共同プロジェクトを展開するなど、その教育的効果は様々な分野に広く認められています。
VUEホームページ:http://www.vtshome.org/
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